製パンにおける粉の違いの影響を探るべく、以下の北海道産強力粉5銘柄食べ比べセットを用い、1日1種類ずつホームベーカリーで食パンを焼いて食べ比べてきました。
最後に改めて全ての評価をまとめて、横並びで比較してみたいと思います。
蛋白含量
①はるきらり(横山製粉):10.5% << ②春よ恋(木田製粉):11.5%
< ③春よ恋(増田製粉):11.8% < ④春よ恋(昭和産業):12.3%
<< ⑤ゆめちから(木田製粉):14.0%
蛋白含量としては中力粉レベルの10.5%から超強力粉レベルの14.0%まで、幅広い5種類だったと思います。
蛋白含量は製パン性に大きく影響すると言われておりますが、含量だけでは説明できないこともあり、そこがまたおもしろいところですね。
焼成後高さ
②春よ恋(木田製粉):14.5cm ≦ ⑤ゆめちから(木田製粉):14.8cm
<< ④春よ恋(昭和産業):16.5cm ≦ ①はるきらり(横山製粉):16.8cm
<< ③春よ恋(増田製粉):17.8cm
蛋白含量との相関があるかな、と思っていたのですがほぼなく(⑤ゆめちからが膨らまなさそうというのが想像通りというぐらいで)、含量というよりはその質の影響の方が大きかったのだと思われます。
また、同じ「春よ恋」でも膨らみが(さらに言えば表面の質感も)全然違っていたことから、挽き方やブレンドの違いにより生じた成分の違いがその辺りに大きく影響するのだと考えられます。
いずれにせよ、製パンにおいては「適切な膨らみ」というのがあると思うので、その「適切な膨らみ」になるように粉の種類によって最適な配合や製法を見出していく必要がある、ということですね。
色
④春よ恋(昭和産業):白っぽいきつね色 << ①はるきらり(横山製粉)
≒ ②春よ恋(木田製粉) ≒ ③春よ恋(増田製粉):キレイなきつね色
< ⑤ゆめちから(木田製粉):やや黒っぽいきつね色
※色の薄いものから濃いものの順
色で特徴的だったのは「④春よ恋(昭和産業)」が非常に薄い色づきであったことと、逆に「⑤めちから(木田製粉)」がやや黒っぽい濃い色づきであったことです。
他の3種がどれもいわゆる「キレイなきつね色」であったことからその対比で上記2種がとても目立ったように思いました。
製パンにおいては「見た目」、特に一般的に「おいしそうな色」というのが求められますから、これも粉の種類によって焼成時間等を適切に整えていく必要がありそうですね。
食感
①はるきらり(横山製粉) < ③春よ恋(増田製粉)
< ②春よ恋(木田製粉) < ④春よ恋(昭和産業)
<< ⑤ゆめちから(木田製粉)
※総合的に食感の軽いものから重いものの順
〜それぞれの特徴〜
① しっとり、モッチリ、だが軽い食感
② しっとり、モッチリ、やや重め、ミミが非常にクリスピー
③ モッチリ感が少なく軽い食感、ミミも柔らかい
④ しっとり、モッチリともに強め、ミミがクリスピー
⑤ モッチリ感が非常に強い、特にミミの部分は噛みごたえ抜群
食感は蛋白含量とそこそこの相関がありました。
やはり蛋白含量が高いほうが(もちろんグルテンの質の影響もあるでしょうが)総合的に強い生地となるため、食感としては重く(=モッチリ感強めに)なっていくのでしょう。
一方でミミの部分がクリスピーになるか柔らかくなるかは蛋白含量とはあまり関係がなく、グルテンの質や他の成分の含量によってメイラード反応に違いが出ることによるものと思われます。
香り
①はるきらり(横山製粉) < ③春よ恋(増田製粉)
≒ ④春よ恋(昭和産業) < ②春よ恋(木田製粉)
< ⑤ゆめちから(木田製粉)
※総合的に香りの弱いものから強いものの順
〜それぞれの特徴〜
① パン独特の少し酸っぱい香りが無く、小麦の甘い香りと香ばしさが少し
② パン独特の少し酸っぱい香りと香ばしさが強い
③ パン独特の少し酸っぱい香りと香ばしさが感じられる
④ パン独特の少し酸っぱい香りはあるが、香ばしさは控えめ
⑤ パン独特の少し酸っぱい香りがあり、加えて香ばしさがとても強い
香りについてはどれも特徴だったものはありませんでしたが、単純に香りの強さの強弱と、「パン独特の酸っぱい香り/小麦の甘い香り/香ばしさ」のバランスには違いが感じれらました。
味
①はるきらり(横山製粉) < ②春よ恋(木田製粉)
≒ ③春よ恋(増田製粉) ≒ ④春よ恋(昭和産業)
< ⑤ゆめちから(木田製粉)
※総合的に味の弱いものから強いものの順
〜それぞれの特徴〜
① 小麦の甘みがよく感じられるが、強い味ではない
② 小麦の甘みとともに酸味も程よく感じられる
③ 小麦の甘みが強い、酸味も程よくある
④ 小麦の甘み、酸味、香ばしさがバランスよく感じられる
⑤ 小麦の甘みがとても強く、噛むほどに味が出てくる、酸味は控えめ
一応、味が弱いものから強いものに並びをつけましたが、どの風味が立っているかで感じ方が変わってくると思うので、参考程度ということで。
どれも小麦の甘みはよく感じられましたが、「はるきらり」がやや弱く、「ゆめちから」が強い、という結果でした。
「春よ恋」3種はやはり同系統の味(小麦の甘みとともに酸味もある)でしたが、そのバランスには明らかに違いがありました。
ですが「総合的な強さ」というと並べるのが難しく、同列ということにしております。
総合評価(小麦品種ごと)
はるきらり
- 風味、食感ともに軽めのパンに仕上がります
- だからこそ飽きのこない、素朴でおいしいパンであるとも言えます
春よ恋
- 風味は甘みや酸味、食感はしっとり感とモッチリ感、いずれもバランスの取れたパンに仕上がります
- 小麦品種自体の特徴もさることながら、製粉会社による違いも現れるため、その違いを活かしたパン作りも楽しめます
ゆめちから
- 高い蛋白含量、そして強靭なグルテンの名に恥じない、とてもしっかりとした食べごたえのあるパンに仕上がります
- 風味も食感の強さに負けず、特徴的な強い甘みを持っています
- 単体での使用にとどまらず、他品種と配合することで特徴を付加したパン作りを楽しめます
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初回に書いた通り、やはりそれぞれの特徴を思い出しながら横並びで比較するのは難しく、果たして正確に評価できているかは若干疑問もあるのですが、極力、今回の評価で感じたことに忠実にまとめを作成してみました。
「官能評価」と言っても明確に軸を作っているわけではありませんので、人それぞれ感じ方が違う部分はあるかと思いますが、国産小麦粉を使ってパン作りをしてみようという方の参考になれば幸いです。
私自身としては、ゆめちからの強烈な個性がとても印象的だったので、他のパンに使ってみることも含めて、もうちょっと触ってみたいなと思っております。
これからも奥深い製パンの世界を楽しんでいきたいですね!
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